Technique-600THz

前夜すべて

11.19

弊学ウィンドオーケストラ定期へ行った。編曲もののなかでも、レスピーギの《シバの女王ベルキス》が一等好きで、それが演奏されるとのことだった。ほかにもバッハのシャコンヌベートーヴェンの大フーガの編曲などが演奏された。

バッハのシャコンヌは編曲で聴くとさらに対位法的な鮮やかさと和声的な説得力が増すように思う。吹奏楽器でバッハを演奏したことがあるが、ピアノで弾くよりも音の流れの落とし所のようなものが見つけやすい印象がある。他の楽器の織りなす音の中で、自分の息はどこへ向かうべきか、注意深く聞けばちゃんとわかる。自分が縦横のどの糸で、どの結び目に差し掛かっているか。機構上、音が減衰しない楽器では、息を吐きながらも、ほんの少し前に音はどう鳴っていたのか、そしてこれからどう鳴るかを連続的に辿っていける。

大フーガってもしかして弦楽器だからおもしろいのかもしれない。発音の繊細さがないと発音点のずれとそれによるモアレのようなものがあんまり聴き取れない(会場の響きもあるかもしれないけど)。

 

シバの女王ベルキス》の編曲版は、カットされてコンクールで演奏されることも多い。けれど全曲通して聴いた方が(当たり前だけど)よりよい聴覚経験を生むな〜と思う。冒頭の静けさは、情景というよりは水面に墨を落として、その黒いもやの拡散を見ているようだった。通常ここはカットされがち。リムスキー=コルサコフに師事していたらしく、結構似てる〜〜〜〜と感じる旋律や楽器の扱いや温度があった。

演奏は本当に本当によい演奏で、曲もいいけど演奏がやっぱりいいといいわね、という感想になってしまう(語彙力がない)。特に「戦いの踊り」は絶対に吹奏楽奏者は好きで(ていうかこれ絶対に吹奏楽でやるべき、それ用でしかない)、演奏からもその気概が伝わってきた。わかるよ、私もそこやるとなったら気合入るし()。元々のオーケストレーションが最高なので、激しいだけではなくて音色の細かで忙しない変化が現れる楽しみもある。にしてもよかったな、あのタンギングの怒涛の粒立ち、あまりにも天才なリズム形のユニゾン、5度で鳴るオルガンサウンド……。

あと、ソロが秀逸すぎて…というよりもこの曲のソロは演奏者に嵌るととんでもない広がりをもつ。テナーサックスのソロ、金管系の響きも鳴っててめちゃくちゃよかった。ソロもそうなのだが、レスピーギヴィオラ奏者だったことがかなり反映されている気がする。これは管弦楽版でも変わらないことだけれど、中高音系の楽器だとしても、中低音の響きへの「分かり」が絶対にある、と思う。音楽の密度をどう練り上げたいか、どう香らせたいかがその低い響きに充満している(これは自分が中低音楽器をずっとやっているから共鳴しちゃってるのかもしれない)。

ラストに舞台裏のバンダとバルコニーのバンダがあるのだが、あまりによくて吐きそうだった。演奏空間を拡張することがどんな意味を持ち、どんな結果を生むかを、ただの目新しさや意味づけ以上のものとして捉えさせてくれた。

 

今朝の新譜 with 川の眺め

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